近年のプラチナの価格推移を見て、このような不安や疑問を抱える方は多いでしょう。
2008年頃に1g7,000円代だったプラチナの価格は、2023年12月現在では1g4,000円代後半まで下がっています。
参考:田中貴金属工業株式会社|日次プラチナ価格推移
以前はプラチナのほうが金(Gold)より高く取引されていましたが、今では高騰を続ける金と価格は逆転し、差は2倍近くまで広がりました。
プラチナの価値そのものを疑いたくなるかもしれませんが、プラチナが金よりも希少価値の高い貴金属であることは今も変わりません。
この記事では、プラチナ投資や売却を検討中の方のために、以下の内容について詳しく解説します。
- この記事で解説していること
- プラチナの価値がなくなることはある?
- プラチナの価格が金より下がった理由
- プラチナの価格に影響を与える4つの要因
- プラチナの価格はこれから上昇するのか?2023年以降の価格予想
【目次】
1.プラチナの価値がなくなることはある?
プラチナの価値が一瞬にしてなくなってしまうことはありません。
なぜならプラチナは、それ自体に価値がある「実物資産」だからです。
企業や国家の倒産・破綻によって、価値がなくなってしまう可能性がある株や債券とは性質が異なります。
市場においてプラチナの価値がゼロになるということも、現実には考えにくいです。
プラチナは極めて希少性の高い貴金属だからです。
金が年間約3,000トン生産されるのに対し、プラチナの生産量はわずか200トン弱となっており、金の1/15にしかすぎません。
有史以来の総生産量で見ても、プラチナは7,200トン(田中貴金属推定)と、金の1/26以下です。
参考:金・プラチナ・銀の特徴 | はじめての方へ | 田中貴金属 総合口座
このような圧倒的な希少価値を持つことに加え、プラチナ需要の約70%は自動車産業をはじめとする工業用需要という特徴があります。
日本では宝飾品のイメージが強いプラチナですが、実は産業分野で欠かせない素材となっているのです。
そのため、価値自体がなくなってしまうことは現時点ではほぼないと見て良いでしょう。
ただし、需要・供給のバランスによって価格が大きく下落してしまうことは考えられます。
1-1.プラチナの価値を測る上で重要な「需要」「供給」の特徴
市場におけるプラチナの価値は「需要」と「供給」のバランスにより決まるので、それぞれの特徴を把握しておくことが重要です。
プラチナの需要と供給に関する主な特徴は以下のとおりです。
- プラチナの供給の特徴
- 金と比較すると供給量は非常に少ない(年間供給量は金の1/15)
- 国別の鉱山生産量は、南アフリカが世界全体の約7割、ロシアが約1割を占めており、地域的な偏りが著しい
- プラチナの需要の特徴
- 需要のうち約7割が工業用、約2.5割が宝飾品である
- 工業用需要内シェアの約6割が自動車触媒(その他の工業用需要は化学、ガラス、エレクトロニクスなど)である
参考:プラチナ四半期レポート 2022年第1四半期 – WPIC
プラチナは、一部の地域でしか採掘できません。
供給量の約7割を南アフリカに頼っているため、南アフリカの政治や経済の動きが、値動きにも反映されやすい特徴があります。
需要に関しては、工業用需要、特に自動車産業での需要が大きいため、世界情勢や景気、自動車産業の影響を受けやすいです。
上記の特徴を踏まえて、次の章ではプラチナの価格が下がった理由について解説します。
2.プラチナの価格が金より下がった理由
2023年12月18日現在の金価格は1g10,224円、プラチナ価格は4,841円(店頭小売価格)となっています。
参考:田中貴金属工業株式会社|貴金属価格情報
「金よりも希少性の高いプラチナが、なぜいま金よりも安くなっているの?」と疑問に思っている方も多いかもしれません。
この価格の違いには、金とプラチナの用途(需要)の違いが関係しています。
プラチナ | 金 | |
---|---|---|
用途の違い | 工業用(自動車)需要が中心 | 宝飾品・投資需要が中心 |
価格変動の 違い |
世界情勢や景気の悪化、自動車産業の動向により下落しやすい | 世界情勢や景気が悪化すると上昇しやすい |
プラチナは優れた触媒作用を持っており、化学的にも安定している特性から、自動車産業をはじめとする工業利用が7割を占めています。
したがって、景気や自動車産業の影響を受けやすいです。
その端的な例が、2008年のリーマンショックです。
世界的な不況により自動車の売れ行きが低迷した結果、プラチナの価格も急落しました。
また、ここ数年では「ディーゼル車向けの需要の減少」も相場を下げる要因になっています。
ディーゼル車はガソリンよりも安い軽油で走行できる自動車です。
しかし、2015年にドイツの大手自動車メーカーが不正な方法で排ガス規制をクリアしていたことがきっかけで、ディーゼル車への信用が下がりました。
プラチナは、ディーゼル車の浄化触媒(排気ガスに含まれている環境・人体に有害な化学物質を浄化する触媒)として用いられています。
そのため、ディーゼル車の需要減少と連動してプラチナの需要も減り、価格が下がってしまったわけです。
一方で、金の需要の多くは宝飾品や投資、中央銀行による保有などとなっており、工業用の需要は7%とごくわずかです。
金は経済危機や世界情勢が悪化したタイミングでは、むしろ「安全資産」として投資需要が増えるので、価格が下落しません。
最近では、コロナパンデミックやロシアによるウクライナ侵攻など、世界的にも先行きが不透明な状況が続いており、市場にも不安が広がっています。
その結果、金価格も高騰しており、プラチナとの価格差も広がっているのです。
3.プラチナの価格に影響を与える4つの要因
プラチナの価格に今後特に大きな影響を与える可能性のある要因は次の4つです。
- プラチナの価格変動要因
- 自動車産業の動向
- 水素社会実現に向けた動き
- 主要消費国の景気動向
- 南アフリカの政治・経済情勢
プラチナの保有や売買を検討されている方は、4つの動向とプラチナ価格の動きをしっかりと追っていく必要があります。
それぞれ解説します。
3-1.自動車産業の動向
自動車産業の動向は、プラチナの価格を大きく左右するので、注意を向けておきましょう。
プラチナは、主にディーゼル車の排気ガスを浄化するための触媒として利用されています。
そのため、欧州を中心に起こっている「脱ディーゼル車」の動きは、今後もプラチナの需要を引き下げる要因になるでしょう。
一方で、ガソリン車の触媒として使用されているパラジウムが、プラチナに代替される動きがあります。
これはパラジウムの供給の大半をロシアに頼っていたからという背景があり、今後代替が進めば、プラチナの需要は増え、価格も上がる可能性が高いです。
また、エコカーの一つとして知られる「燃料電池車(FCV)」の需要は、2035年まで伸び続けることが推測されています。
参考:燃料電池システムの世界市場を調査 – 富士経済
燃料電池車は、水素と酸素を化学反応させて電気を発生させ、その電力でモーターを動かす仕組みです。
実はこの電力を発生させるプロセスでは、ディーゼル車より多くのプラチナが触媒として必要になるため、プラチナ需要が拡大する可能性があります。
3-2.水素社会実現に向けた動き
「水素社会」実現に向けた動きは、プラチナの価格を上げる要因になるでしょう。
水素社会とは、水素を主な燃料・エネルギーとして用いる社会を指します。
水素による発電では、CO2や排気ガスが出ず環境にやさしいため、近年日本や欧州で水素エネルギーの活用が増えています。
「燃料電池車」も水素エネルギーを使ったもののひとつです。
水素エネルギーを生成する過程で触媒としてプラチナが必要なので、水素社会に向けた動きはプラチナの需要拡大につながる可能性があります。
ただし、希少なプラチナに代わる触媒が研究されているため、もしプラチナに代わる良い触媒が見つかれば、需要が減少することもあるでしょう。
3-3.主要消費国の景気動向
プラチナの消費は、欧州・北米・日本・中国に集中しています。
前述したとおり、プラチナの約7割が工業分野で用いられているため、こうした主要消費国の景気動向がプラチナ価格にも影響を与えやすいです。
実際に、新型コロナの拡大が始まった2020年の3月には、世界的に自動車生産が落ち込んだことでプラチナの価格は下落しました。
景気が良くなれば消費が活発になるため、需要が増えて価格も上がりやすくなりますが、逆に景気が悪化すれば、需要が減って価格は下がりやすくなります。
各国のGDPや金融緩和政策などをチェックすることで、景気を追うことができます。
主要消費国の景気は注視しておきましょう。
3-4.南アフリカの政治・経済情勢
世界最大のプラチナ産出国である南アフリカの政治・経済情勢は、価格変動要因となります。
実際に、2008年のリーマンショック直前に起こったプラチナ価格の急騰は、南アフリカの鉱山会社の電力不足による生産停止などが関わっていました。
最近では、南アフリカの鉱山労働者によるストライキも価格を上昇させる要因の一つになっています。
また、南アフリカの通貨「ランド」が米ドルに対して下落した場合、輸出に有利に働き供給量が増えるといった理由から、プラチナの価格が下落する可能性があります。
世界第2位のプラチナ産出国ロシアの政治・経済情勢も影響はしますが、圧倒的な供給量を誇る南アフリカの動向が及ぼす影響のほうが大きいでしょう。
4.プラチナの価格はこれから上昇するのか?2023年以降の価格予想
では今後、プラチナの価格は上昇する見込みがあるのでしょうか?
結論から述べると、少なくとも今後4年間はプラチナの価格が上昇傾向になる可能性があります。
WPIC(World Platinum Investment Council )がまとめたレポートによると、2023年〜2024年にかけてプラチナは供給不足気味になり、2026年までに不足が拡大するとのこと。
参考:プラチナ投資のエッセンス 2022年6月 (2023年から2026年の需給見通し) – WPIC
その一因として、ガソリン車の浄化装置触媒として使われているパラジウムの代わりに、プラチナが使われ、需要が増加することが挙げられています。
また厳しくなる排ガス規制に対応するため、車両一台に使われる触媒の量が増加することも指摘されています。
ただし上記データでは、自国の需要を超えてプラチナを輸入している中国の輸入量が考慮されていないとのことなので、この点には注意が必要でしょう。
5.プラチナの下落が不安なら売却も検討しよう
プラチナの価格予想を解説しましたが、実際のところ、未来のことは誰にもわかりません。
投資や買取のプロであっても「どのタイミングで売買するべきか」というのは見極めが難しいものです。
「もう少し待っていれば、もっと高く売れるはず」と思って保有していたら、「あのときが一番高く売れる時期だった」なんてことも十分起こりえます。
プラチナの価格急落に不安がある方は、ご自身で納得のいく価格を設定しておき、その価格に達したタイミングで売却すると良いでしょう。
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6.【まとめ】プラチナの価値がなくなる可能性は極めて低い
プラチナの価値や今後の価格変動について解説しました。
プラチナは金よりも希少価値が高い貴金属です。
優れた触媒作用を持ち、化学的にも安定しているという特性から、自動車産業をはじめとする工業的な利用も多くなっています。
そのため今後価値がなくなる可能性は低いでしょう。
ただし、世界情勢や経済の状況によって価格が変動するリスクは金よりも大きいです。
プラチナへの投資や売買はきちんとタイミングを見極めておこないましょう。
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